< QCサークルの活性化 4個のポイント | 客観説TQM
  • 古典品質管理からの脱却

qcサークルこの活動を指導する教育機関・セミナー・書物は多数あり、長年誤った指導が行われ、その結果「活性化するには?」という谷間に落ち込んだ。

何が間違っていたか、時代遅れのQCサークルを見直そう。重大な間違いが4個ある。

QC活動は、小さな改善を「七転び八起」のCAPDサイクルで積み重ねる活動だよ。まずQCストーリーがおかしい。

 

従来のQCストーリーは「一発勝負で大きな成果を挙げよ」というもので、ダメなことは明らか。QCサークル活動を「本来の姿」に戻せば、自然に活性化すること請け合いだ。このページでは、特に、活性化に注目しよう。

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目 次

1 出発点の間違い

2 QCCの目的

3 自主性の問題

・自主性の由来

・トヨタ事件

4 QCストーリー

・一発勝負

・管理サイクル

5 相互啓蒙

5.1 発表会の開催

5.2 改めるべき点

・相互啓蒙の発表

・発表するテーマ

6 参考事例

・参考事例(1)

・参考事例(2)


1 出発点の間違い

QCサークルを最初に推進した関係者は、出発点で大きな間違いを犯した。まず、それをはっきりさせよう。1960年~1962年にかけて QCストーリー に沿ったQCC活動と発表会が開始した。また、QCサークルは、次のように定義された。

 

同じ職場内で品質管理活動を 自主的に行う 小グループのことで、全社的品質管理活動の一環として自己啓発、相互啓蒙 を行い、QC手法を活用して 職場の管理・改善 を継続的に全員参加で行うもの。


すなわちQCサークルを活性化するには、これら4つの問題点を解明して改めればよい。
・QCストーリー を使わず、CAPDないサイクルを採用すること
・「自主的に行う」を廃止し課長に協力すること
・発表は相互啓蒙を木定期行うこと
・職場の管理・改善テーマは、を1個だけでなく複数を選定すること

 

上に示した箇所にQCCの本来の姿を著しく歪めた原因が潜んでいる。これらを是正すれば活性化は疑いなしである。どこに間違いがあるのか? どう是正すればよいか? 一緒に紐解いて行こう。

2 QCCの目的

まず、QCCの目的から入ろう。
自己研鑽、相互啓蒙、職場の管理・改善への貢献を目的とする。これらは、QCサークル制度の発起人である石川薫氏(当時、東大教授)の承認の下で決められた。

 

自己研鑽
データをQC手法で解析して、データが持つ意味を明確にして改善に役立てる。
・カンで大げさな特性要因図を描いても、QC手法でデータ処理をしたことにはならない。
・グラフがなくても分かることをグラフに示しても、QC手法を使ったことにはならない。

 

相互啓蒙
他のサークルの参考になる事例を発表すること。
・金額効果は無関係だ。
・相互啓蒙の主な活動は、活動事例の発表である。
・相互に発表によって、他のサークルの活動を参考にしつつ自己研鑽に役立てることができる。

 

職場の管理・改善
日常業務の管理・改善である。
・これを「日常管理」という。
・大きな利益を生むのは方針管理の役目であるに対し、日常管理は、ムリ・ムラ・ムダをなくすという「小さな改善を積み重ねる」のが本来の姿だ。
・活動のタイプは、CAPD管理サイクル(七転び八起)である。

3 自主性の問題


3.1 由来

「自主的に行う」とは、他からの干渉がなく自由に、という意味である。日常管理をやるのに「上司の意向を無視して自由にやれ」というのだから「めちゃくちゃな指導」である。本来なら課長がQCCを指導すべきなのに、反対に「干渉するな」の関係になった。明らかに矛盾している。どんないきさつで、こんな変な話になったのか?

 

1962年、石川薫氏がQCC構想を発表した当時、産業界の大反発を受けた。現場の担当者が管理・改善などできる訳がない。勤務時間中にそんなことをされたら、ラインが止まってしまう。どうしてもやるというなら休憩時間などの時間外にやって欲しい。

 

時間外となれば、課長などの管理職(上司)が干渉するいわれがない。「自由にやってよろしい」ということになった。その結果、どうなったか?

 

QCCが日常管理をし、しかも課長は口出しできない。課長は、本来の職務である日常管理を放棄する羽目になった。品質管理はQCCがやるのだから、課長は品質管理から解放され、もっぱら納期だけ追っかける。こういう企業が全国に蔓延した。

 

QCCが本当に品質管理をするなら、それでもまだ許せる。だが課長の干渉を受けないから、誰からも束縛されることなく、自由に発表のための「ウソ話作り」に取り組むようになった。

 

それは、度を越えた「ウソ話競争」に発展したのである。そのような風潮の中で、事件が起きた。

3.2 トヨタ事件

「QCC活動は自主的な活動であり正規の業務ではないから、時間外に行った場合に残業代を支払わない」とする扱いに対し、トヨタの従業員が訴訟に踏み切った。

 

名古屋地裁は、小集団が自己研鑽のための自主的活動との主張を全面的に否定した(2007年11月、トヨタ堤工場事件)。これを受けてトヨタは、生産現場の従業員が勤務時間外に行なうQCサークル活動に残業代を全額支払うことを決め、2008年6月1日から実施した(2008年5月22日読売夕刊)。

 

QCサークルは、日常管理であり正規の業務である。自主的活動(上司の指示には従わない)という性格はあり得ない。給与の対象になるし、管理職の指導を受け管理職と協力して自発的に改善を進めるのが本来だ。

 

品質管理の学界は、「誰かが間違うと、他も無批判に同じ間違いを引き継ぐ」という自己是正力の欠如が見られる。間違いが法律家よって指摘されない限り延々と50年も自己是正が出来なかった事実は、学問の危機的状況を反映している。

4 QCストーリー


4.1 一発勝負

上司の指導がなくても、QCCは活動できた。なぜなら、講習会を通じてQCストーリーという「ウソ話の作り方」を指導されたから~だ。

 

QCストーリーは、現場におけるQC手法を用いた管理・改善のノウハウとして1960年代初頭に「品質管理誌」に掲載された。それは、次のような8つのステップから構成されていた。
・テーマ
・とりあげた理由
・現状の把握
・解析
・対策
・効果の確認
・標準化
・残された問題点と今後の進め方

その後、現状の把握の後に「目標の設定」と「活動計画」が追加された。

 

これのどこがまずいか? QCCとは相入れない「一発勝負の大改善」のストーリーになっていることだ。

 

上のQCストーリーを、もう一度よく見て欲しい。
・少しづつ改善を積み重ねる 七転び八起 のタイプになっているか?
・それとも、一挙にケリをつける 一発勝負 のタイプになっているか?

 

石川薫氏は、実験計画法の大家であった。彼が得意とするやり方は、
・考えられる要因を全て特性要因図に列挙して、
・直交配列表を用いて各要因の影響力を一挙に調べ、
・一挙に解決する
という一発勝負のやり方である。

 

上のQCストーリーを見ると、まさにこの一発勝負のストーリーになっている。これを現場の担当者にやれといっても、できる道理がない。最初からムリな指導だったのである。QCストーリーの通りに活動したとする発表は、全て「作り話」だと言っても過言ではない。

4.2 管理サイクル

現場の担当者にできる活動タイプは、PDCA または CAPD サイクルである。
・現状をチェックする(check, C)
・解決策を検討する(action, A)
・解決策を決める(plan, P)
・決めたことを実行する(do, D)
・現状のチェック(C)に戻り、手段が尽きるまで繰り返す(下図参照)。

 

capd

 

ある業務を初めて開始する場合はPから始まり、既に存在する業務を改善する場合はCから始まる。要するに「失敗したり、少し成果があったり」を繰り返して、少しずつ改善を積み重ねるやり方である。これを試行錯誤(trial and error)という。ダルマ七転び八起という表現もある。
例えば、
・対策Aを実施してみる。
・ダメか。じゃあ、対策Bをやってみよう。
・それでもだめなら、対策Cをやってみよう。

 

そんなやり方で、改善などできるだろうか? それが意外にうまく行く。ノーベル賞を取った学者の話を聞くと、ほとんどがこの試行錯誤で成功している。筆者は現役時代に、このCAPDの繰り返しで30件以上の難題を解決した。
立派な特性要因図を作ってもムダであることは、十分に経験した。

 

例えばの話、筆者は65歳になってからパソコンを始め、html でホームページを作り、今こうしてWordPressをやっている。他人から習ったことはない。やってみては失敗、またやってみては失敗。全て、試行錯誤である。決して「頭がいいからできた」などという「うれしい話」ではないわ。

 

失敗しても、大した損害もなければ怪我をすることもない。失敗のつど「このやり方ではダメだな」と、学ぶだけである。これを繰り返しているうちに、次第に「正解の範囲」が狭まってくる。

 

失敗したら大損害になる 大改善 では、失敗が許されない 一発勝負 だから 石橋を叩く。方針管理では、そのために長期計画によって研究期間を設ける。

 

しかし、失敗しても損害が少ない 小改善 の場合は、失敗が許され、七転び八起の試行錯誤である。QCC活動は、明らかに後者であり CAPDサイクル だ。

 

上のQCストーリーをQCCに押し付けた結果はどうだったか? いや~、それが大変に喜ばれたのよ。なぜか?
ウソ話を作るのに、QCストーリーは大変に便利だったのだ。何しろ、QCストーリーに従って、
・テーマを決め、
・現状を把握し、
・目標を立て、
・———–

~と、定型用紙に原稿を書いて行けば、簡単にウソ話が作れる。こうやって全国的に「ほら吹き大会」が開かれた。

 

定型用紙

もちろん、中には立派な改善をしたケースもあった。しかし改善をしたのは真実であっても、発表には必ずウソが含まれた。なぜ、そのように言い切れるか?
・原因も対策も分からないうちから「目標」を立て、「活動計画」を立て、
・ピタリと的中したという話は、キリスト並みの預言者のやることだからだ。


CAPDサイクルを何回繰り返せば結果はどうなるか、事前に分かるはずもなければ制御できるはずもないから、目標や計画は立てられるはずもない。

 

CAPDサイクルは、若い人たちの教育に最適だ。物事はそう簡単には行かない。失敗を繰り返してようやく解決するのが現実で、努力を重ねることが大切だ。QCストーリーに従えば楽々と成功するという話は、教育上も有害である。

 

どうだろう? QCC活動の活性化の道が、少しは見えてきたかな?

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5 相互啓蒙

5.1 発表会の開催

QCサークルの目的の一つに、「相互啓蒙」がある。これは具体手に何をすればよいのか?

 

相互啓蒙の方法としては、パーティを開くのも一つだろう。だがコーヒーを飲んで雑談したぐらいで相互啓蒙になるとは思えない。やはり、改善事例を相互に発表することであろう。

 

すると事例発表というのは、
・QCサークル同志が、
・自分たちの相互啓蒙のために、
・発表し合うイベント、

~ということになる。ここで、いくつかの結論が出てくる。

5.2 改めるべき点


5.2.1 相互啓蒙のための発表

それには、参考になる(と思われる)過去の事例を選んで発表する。このことは、次の結論を示唆する。
・QCサークルの発表を、経営陣や管理職が審査してはならない。
・発表の審査は、サークル同志の投票によって決めるべきだ。

 

発表は他のサークルに向けられたもので、参考になったかどうかは経営陣等が評価することではない。従来の発表会を見て、特にひどい点は、
・本来は指導すべき立場にある管理職が、
・指導もできずに、
・審査員になって、
・QCサークルの発表を審査する、
~という事態である。

5.2.2 発表するテーマ

(1) テーマの選定:

相互啓蒙のための発表だとすると、過去の複数の「終了テーマ」の中から参考になるものを選ぶべきだ。つまり、「テーマの選定」とは、発表テーマの選定 でなければならない。

 

ところが、従来の発表を見ていると、
・4月に活動テーマを選定して、
・そのテーマを9月ごろに終了し、
・11月に発表する。

 

つまり、「テーマの選定」とは活動テーマの選定 なのである。何だかんだと「もっともらしい理由」をつけて1個のテーマに絞り、他のトラブルの改善には手を付けない。

テーマの選定

 

しかし活動テーマは、本来1個に限定して選定すべきものではない。そのことを理解するのに、分かりやすくする具体例がある。

 

新たに工程を設置して、新製品の製造が始まった。そうしたら、5項目の不良品が発生し、毎日全数選別をすることになった。QCサークルは何だかんだと理由をつけて1個のテーマを選定し、他は放置すべきだろうか? それとも(成功するかは別として)全てに着手すべきだろうか?

 

つまり、「活動テーマの選定」も「選定の理由」もあり得ないことが分かる。下図に示すように、常に複数のテーマに取り組むのが日常管理の実際である。

 

複数テーマ

 

(2) 発表テーマがない場合:
他のサークルの参考になるような活動実績がない場合がある。こういう場合に、よく、「全員参加だから、必ず発表せよ」と強く迫るお偉方がいるものだ。もちろん、全員参加と「必ず発表」とは何の関係もない。

 

こういう企業では、例外なくウソ話作りが行われる。ウソ話を作って発表すると、「やれば、できるじゃないか」と、お褒めの言葉を頂けるのだ。

6 参考事例

6.1 事例(1)

〔活動の内容〕

ある工程の製品にスリキズが発生しているので、QCサークル(全員がおばさん)が取り組んだ。

 

C: 製品にスリキズが発生している。
A: 作業台に製品を横倒しにしたとき、ゴミにすれるのかも。マットを置いてはどうか?
P: 作業台にマットを敷くことにしよう。
D: 作業台にマットを敷いた。

 

C: 効果はなかった。
A: では、軍手のゴミかも。ビニル手袋に変えたら?
P: ビニル手袋に変えよう。
D: ビニル手袋にしてみた。

 

C: やっぱり効果はなかった。
A: コンベア上で製品同士がこすれるかも。接触しないように、カバーを被せるか。
P: カバーを被せてみよう。
D: カバーを被せてみた。

C: やっと、成功した。

スリキズ不良の時系列図

〔発表の内容〕

1. テーマ:「スリキズ不良」に挑戦

 

2. 選定理由:CAPDを根気よく繰り返すことの大切さを痛感しました。

 

3. 活動の概略
(活動の内容を発表)CAPDの形式で説明しなくてもよい。現場や製品の写真等を見せて、具体的な内容が分かる説明が望ましい。

 

4. 感想:5年間もの長い期間、スリキズ不良が発生しないように、毎日、気を使って作業をしていました。しかし、出荷検査で不合格となって全数選抜をすることが度々ありました。私たちに不良対策などできるとは思ってもいませんでした。しかし、係長から言われました。

 

”入荷時にはキズはない。この組立工程でキズが付くことは確かだ。
普段の作業の中で、「これが原因ではないか?」と気になっていることがあったら、
片っ端から対策を打ってみなさい。
対策が打てない場合は手伝うから、先ずはやってみよう。”

 

やってもダメ、またやってもダメ。やっぱり私たちにはムリだと感じていたとき、ついに成功したのです。また、普段の作業で「原因ではないか」と気になっていたことが無関係だと分かって、スッキリしました。

以上で発表を終わりと致します。

6.2 事例(2)

〔活動の内容〕

ある中小企業の金属プレス工場で、金型設計者がK君1人しかいない。もちろん、多忙を極めている。ところが、雑用が多くて、本職の金型設計に没頭することができない。この悩みを聞いた同じ金型職場のQCサークルが取り組むことになった。

 

雑用が発生するたびに「1件用紙」に、K君が次の事項を記録する。
・雑用の内容
・要したおよその時間

 

翌日、QCサークルが手分けして対策を打って、同じ「1件用紙」に対策の内容を記録する。その対策に効果があったかどうかは、よく分からない。しかしこの活動を40件ほど繰り返したら、全体としての効果がはっきりした。

 

雑用時間

 

〔発表の内容〕

1. テーマ:「雑用を減らそう」

2. 選定理由:CAPDの繰り返しが多すぎる場合に参考にして欲しい。

3. 活動の概略:(活動の内容を発表)CAPDの形式で説明しなくてもよい。1っ件用紙の写真を見せれば、具体的な活動の内容が分かる。

4. 感想:金型設計者がK君1人であるため、雑用が集中して本業に手がつかない悩みがあった。QCサークルが手分けして対策を講じたが、対策を講じても1件ずつの効果を確認できなかった。それではCAPDの ”C” が欠けることにならないか?

“C” は「現状のチェック」であるが、打った対策の効果を確認する意味の他、それとは別に「現状で満足か?」を確認する意味もある。従って、多数のCAPDの繰り返しによる「全体としての効果」を確認できれば十分だ、ということになった。

皆さんの参考になればと思って発表させて頂きました。以上で発表を終わります。

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(以上)