< なぜなぜ分析:真因、根本原因、再発防止 | 客観説TQM
  • 古典品質管理からの脱却

考える少女事故の真の原因を解明して対策が済んだ後で、再発防止のために「なぜ?」を繰り返して根本原因を追究する手法・活動のことです。

根本原因とは、管理システムの欠陥(管理がズサンな点)のことです。この根本原因を放置すると再発は防げない。

真の原因は、「なぜ?」を繰り返しても分からない。その方面の知識(固有技術)とデータ分析によって追求します。

緑線

目次

1 なぜなぜ分析

1.1 定義

1.2 再発とは

1.3 原因と理由

1.4 三つの説

・各説の概要

・管理システム

1.5 誰がやる?

1.6 航空機事故

1.7 福祉施設

1.8 品質クレーム

1.9 病院の診察

2 深掘り,浅掘り

2.1 深掘りとは

・真因への深掘り

・根本原因への深掘り

2.2 浅掘りとは

1. なぜなぜ分析とは

1.1 なぜなぜ分析の定義

出張講習「なぜなぜ分析」とは、再発防止の目的で「なぜ?」を繰り返すことによって事故の根本原因(管理の欠陥、管理がずさんな点)を追究する手法・活動をいう(root-cause-analysis:RCA)。

 

従来「なぜなぜ分析」は、

・トヨタ方式
要因展開説

で指導されるケースが多かった。しかし、これらの指導によっては真の原因(真因)も根本原因も究明されず、再発防止に成功することはほとんどなく、実用性に著しい欠陥があった。

1.2 再発とは

事故が起きる以上は、原因がある。その原因を突き止めて是正しなければならないのは当然だが、それだけでは再発防止にならない。原因を突き止めて是正してもその事故一件だけが解決するだけであり、管理のずさんな点を放置すると、似たような事故がまたいつ起きるか分からない。

 

具体例で説明すると、あるレストランで食中毒が連続して発生した。最初の一件は、調理人の一人が手を洗う方法に問題があった。正しい洗い方を指導して全調理人に水平展開した。レストラン経営者は、これで再発防止が完了したと宣言してレストランを再開した。

 

しかし、翌月にも食中毒が発生した。今度は、仕入れた野菜の取り扱いにミスがあった。これも是正して水平展開した。このような食中毒が5件起きたが、その都度、同様に真因を突き止めて是正した。レストラン経営者は、いう。「これら5件の食中毒は、それぞれ真因が異なっており、別事件だから再発ではない」と。

 

別の例を出そう。ある病院では、3年前に投薬ミスで患者が死亡した。2年前に初歩的な手術ミスで患者が死亡し、昨年は新生児の取違えミスが起きた。

 

これらは、一見、全く別の事故のようにも見える。しかし、同じずさんな管理システム(事故予防の仕組み)の下で起きたという共通点がある。従って、再発と理解するのが妥当である。

 

「原因が別なら再発ではない」という見解もある。果たしてそうだろうか? 同じ原因でなければ再発ではないというなら、世の中に「全く同じ原因」など存在しない。それだと、最初から再発という現象もあり得ないことになる。

モグラ叩き
だから、次のように定義しよう。
再発とは、同じ管理体制(管理システム)の欠陥により複数の事故が生じることをいう。ちなみに、事故を起こしては「原因追及と対策」を繰り返すことを俗に モグラ叩き という。これが再発である。

1.3 原因と理由

原因を尋ねているのに、多くの人は理由で答え、そこで「なぜなぜ分析」は行き詰まってしまう。原因と理由に区別は、非常に重要である。

1.3.1 原因の種類

地震でブロック塀が倒壊して少女が死亡したり、新幹線の台車枠にクラックが見つかったり、社内の製造工程で不良が発生して流出したり、病院で心臓手術でミスをして患者が死亡したり、事故は毎日のように起きている。

 

事故が起きる以上は原因がある。
ここに、原因の意味を説明しよう。事故Aが発生したが、もし事象Bがなければ事故Aもなかった関係にあるときAとBは 因果の関係 にあり、事象Bを原因 という。因果の関係は「事象と事象の関係」であって、人の意思とは無関係である。

 

次に、原因に3つの種類があることを理解しよう。

見かけの原因 apparent cause:
原因ではあるが、それを是正しても問題は解決しない(例:ヒューズの溶断)。

真の原因(真因)true cause:
原因であって、それを是正すれば問題は解決するものをいう。ただし、問題を解決しても、再発防止にはならない。

根本原因 root cause:
「日本人のルーツ」という場合のルーツと同じ意味である。管理体制(管理システム)のどこの欠陥に由来するかを問う。この欠陥があると、同様の事故が再発する。管理システムとは、規則や設計の規定類、及び実行力を指す。

 

以上の言葉の区別をGoogle 翻訳で確認しよう(下の画像)。

1.3.2 理由との区別

「なぜ?」の意味は、「予防できなかった原因」を尋ねていている。つまり、「本来はこういう手段が規則に定められいるべきなのに、どこがずさんか?」を尋ねている。ところが、「なぜ?」の答えとして、原因ではなく理由を答えてしまう事例 が圧倒的に多い。

 

具体例で説明しよう。ある製品を納入したら、従来なら「甘い受入れ検査」で合格していたのに、突然、客先が「きびしい検査」をし、不合格となった。

 

1なぜ:
なぜ、不合格となったか?
(答え)従来は日本製のものを納入してきたが、利益が出ないので中国製のものを納めたら警戒されて突然「きびしい検査」をされたから。

 

これは「こういう事情だから、そういう結果になるのもやむを得なかった」と、人の行動を正当化する理由(言い訳)を述べている。ここで「なぜなぜ分析」は、行き詰まる。これだと「そのような事情だとすると、中国製の納入をやめよう」という対策になってしまう。

 

ところが尋ねているのは、そんなことではない。
「いかに厳しい検査をされようが、顧客と取り交した製品仕様を満たせば合格するはずだから、たとえば、
・規則に、詳細な製品仕様を取り交わすように規定されていない、
・規則に、規定されている守るように管理されていない、

~など、「受注契約の手続きの規則に欠陥があったのか?」と訊いているのである。答えは、例えば「製品仕様の詳細を取り交わす規定はなかったから」というようなことになる。さらに、「なぜ」を続けると、~

 

「受注手順の詳細を設計」をしていなかった(工程設計なし)。
「手順違反を起こせない仕組み」(規則の教育、FMEA等)もなかった。
規則を「JISやISOの受審のための体裁」ととらえ、真剣に検討しなかった。
品質管理委員会の委員長 は、品質保証部長であり、営業部や資材部に対して権限がなかった。

 

これらが、この事故の 根本原因 である。根本対策は、
1.社長が品質管理委員会の委員長をつとめ、品質第一主義を実現すること。
2.営業部、資材部等の各業務のプロセスを設計し、定期的に教育し、FMEAで評価すること。

1.4 三つの説

1.4.1 各説の概要

「なぜなぜ分析」とは、何のために何を究明する手法で、やり方はどうか、3つの立場がある。


トヨタ方式(なぜなぜ5回):
「なぜなぜ分析」は、真の原因を追究するための活動だという話をよく耳にする。
真の原因 (真因)とは、見かけの原因ではなく、対策を打てば問題が解決するものを指す。
この見解はトヨタの大野耐一氏が著した「トヨタ生産方式」に紹介されている。

 

なぜを5回(5回にこだわらないが)繰り返して真因を究明し、水平展開する。この説の誤りは、
(1)「なぜ」を繰りかえしても、固有技術がなければ真因は判明しないこと、
(2)真因に対策を講じても再発防止にならない点にある(詳細は後述)。

 

「なぜなぜ分析」で真の原因を追及するというのは、誤った理解です。真の原因の追求は「なぜなぜ分析」ではなく、その分野の知識に基づくデータの収集と解析によって行う。「なぜ?」と尋ねたところで、誰も答えを教えてくれない。結局はデータの収集と解析をしなければ真因は分からない。

 

要因展開説(原因候補を展開する):
原因になり得るものを多数列挙し、それぞれ発防止策が打てるまで「なぜ」を繰り返して対策を講じる。
この説の誤りは、
(1)原因候補を多数列挙しても、真因が特定しないから問題が解決しない。
(2)再発防止策が打てるまで「なぜ」を繰り返すのは不可能である(根本原因を問わないから)。

根本原因説(管理システムの欠陥を問う):
最後の「 根本原因説」が最も合理的だと思われ、当研究所が最初に提唱した説である。

 

この説では、真因の究明に「なぜなぜ分析」を使わず、次の二つの方法で真因を究明する。詳細は後述する。
・第一は、データの収集と解析
・第二は、CDPAサイクル

 

根本原因とは、管理の欠陥(=管理がずさんな点)を指す。
・管理規定のどこに、どのように規定されているのがまずいとか、
・そもそも規定がないとか、
・規定はあるが、守られなかったとか、

そのような「予防の仕組みに欠陥がある」から起きた、ということを明確にする必要がある。

1.4.2 管理システム

管理とは、仕事の結果を偶然に得るのでなく支配することをいう。 → 詳細(戻りは、ブラウザの戻りボタンで)

この管理の手段を管理システムという。どのような手段を用いて管理するか?

 

1)第一は管理規定や設計書のような規則である。
・各種業務管理規定
・品質マニュアル
・製品設計
・工程設計
~など。

業務管理規定や設計は、トラブル対策の束である。

これをやって、次にこれをやり、次に~

という具合に「正しいフロー」が規定される。これが業務管理規定だと思っている人は多い。しかし、それはあるべき業務フロー規定したものであって半分である。残り半分は、「異常事態が起きてフロー通りに行かない場合にどう行動するか」という規定である。

 

例えば、
・欠勤が多くて技能が十分な作業者が不足する
・製品を床に落とした
・顧客と契約するときに顧客が商品の詳細な仕様を明示しない
・外注企業が検査成績書を添付せずに納品してきた
・図面や規格に不明確な点があった

~などの場合に、どう対処すべきか等。

 

例えば、工程設計に不明確な点があるとする。しかし、それを読んだ工程管理者は不明確だと取らず「ある特定の意味」に解釈する。それが工程設計者の意図と異なる場合に、トラブルが起きる。従って「不明確な場合は問い合わせよ」と規定しただけでは予防策にならない。その工程設計の表現を変更し、かつ工程設計管理規定に「表現の仕方」について規定を設けなければならない。

 

あるとき突然に不具合が起きるのは、通常は起きない異常事態に管理システムが対応していないからである。しかし、最初からあらゆる異常事態に対応する管理システムを設計することはできない。失敗から学んで 管理システムの穴埋め をするのが「なぜなぜ分析」である。

 

業務担当者はいくつかの異常事態を経験するはずなので、その都度、業務規程を明確にして置かねばならない。

 

2)第二はの規定類と実行手段である。
・人材
・技術
・設備
~等の経営資源である。
いくら立派な規則を制定し、立派な製品設計や工程設計をしても、それを実現する人材・技術・設備がなくては実行できない。

 

3)一番重要なことは、
経営陣や管理者層の認識(品質管理の理解)である。例えば、経営陣が「品質管理とは、検査をすること」と理解しているようだと、ここに根本原因がある。なぜなら、そういう理解だと「営業部・資材部・技術部・製造部は品質管理をしない」部署だということになり、どの部署も誰も品質を管理しないからだ。

1.5 「なぜなぜ分析」は誰の仕事?

「なぜなぜ分析」を行うのは誰であるべきか?

 

次に該当する者が行わないと、根本原因と対策に辿り着くのは難しい。
・現在の管理システム(業務管理規定や工程設計)を熟知している者
・業務の現場情報を持っている者

 

故に、外注品で起きた不良については、資材部と外注先が共同で行うのが望ましい。社内の製造部で起きた不良については製造部と工程設計部署(生産技術部)が共同で行うのが望ましい。いずれの場合も、品質保証部が「なぜなぜ分析」と対策を監査しなければならない。

 

組織変更・設備の増強など、大掛かりな対策が必要な場合は、品質管理委委員長の下で「なぜなぜ分析」を再現して決定を仰ぐことになる。

1.6 航空機事故の例

真の原因は、見かけの原因とは異なり、是正すれば問題が解決する。これを追究するのが「なぜなぜ分析」であると広く説かれ、実施され、ほとんど失敗している。果たして「なぜなぜ分析」は、真の原因を明らかにしてくれるだろうか?

 

航空機の墜落事故が起きたら、事故調査委員会は「なぜ、墜落したか?」と「なぜなぜ分析」を始めるだろうか? いや! そんなことはしない。フラト・レコーダー、ボイス・レコーダー、機体の残骸等のデータを収集・解析して墜落原因を追究する。

 

そうです。事故が起きたとき、真の原因の追求は「なぜなぜ分析」ではなく固有技術に基づくデータの収集と解析によって行う。その分野に通じた人(固有技術に詳しい人)がデータを集めて解析する。

 

それで真因が分からなければ、さらにデータを追加して解析を繰り返す。「なぜ?」と訊くのは自由だが、訊いたところで誰も教えてくれないからデータの収集と解析を繰り返す以外にないのです。

 

結局、真因の追求に必要な要素は次の2つです。
ⅰ)固有技術(その分野の詳しい知識)をもつこと。
ⅱ)データの収集と解析を繰り返すこと。

 

真因が特定されて処置が済んだら、今度は再発防止です。それは結局、予防できなかったという管理の欠陥を問題にすることに他ならない。この「管理の欠陥」が根本原因であって、なぜなぜ分析によって究明しなければならない。

 

真因の追求で「なぜ?」と訊く必要がないなら、根本原因の追究でも「なぜ?」と訊く必要はないはずだ。その点はどうか? くぅ~、実にいい質問だ、いいところに気が付いたな。

 

真因というのは、真実だから、科学的に特定されて答えは一つしかない。ところが管理の問題は多数の人が関わっており、誰かが一方的に決めつける訳には行かない。答えは一つと限らない。関係者が集まって「どう管理すれば予防できたか」を協議しなければならない。

 

だから司会者は「皆さん、なぜ、予防できなかったのか?」と意見を訊くことになる。だから、「なぜ?」の繰り返しになるわけ。

 

しかし、管理技の素人が「なぜ?」と尋ね、管理の素人が答えを出しても全く進まないことは確かだ。
なぜなら、「管理システムのあるべき姿」を思い浮かばず、「何が欠陥なのか」答えようがいから。

 

事故やヒヤリ・ハットが起きたら、
ⅰ) データ収集と解析によって真の原因を突き止めて是正する(なぜの繰り返しは不要)。
ⅱ) 真の原因を是正したら、次に「なぜ」を繰り返して根本原因を特定して是正し、再発を防止する。

となるが、さらに例を示そう。

1.7 福祉施設の例

福祉施設で、老人が床の段差につまずいて転んだとする。根本原因説では、次のような進め方になる。

 

・データ収集と解析:
転んだ現場を観察し、段差が原因で転んだことを突き止め、段差をゆるい傾斜に変更する工事を行う。「なぜ?」と問う必要がないこと明らかです。

 

・「なぜなぜ分析」の開始:
床の段で転びやすいことは一般に知られており対策も可能だったのに、なぜ、事前に対策を講じなかったか?
これが第1問です。この先、「なぜ」を繰り返して事前に対策を講じなかった管理の欠陥を追究します。職員の職務分担が不明確とか、安全を優先にしなかったとか、いろいろな管理面の欠陥が出てくるはず。根本原因は1個に限らない。

 

このように、管理システム(管理体制)を是正しなければ再発は防げず、モグラ叩きになってしまう。

1.8 品質クレームの例

御社では図のような「なぜなぜ分析」をしていませんか?

 

取付けもれ

 

これは「なぜなぜ分析」の要因展開説を採用した事例です。このようにやるんだよと指導を受けたのだろうが、よく見て下さい。表には、原因かもしれない候補が多数挙げられ、3~5回の「なぜ」をやって5つの対策を講じている。

 

なぜ、5つも対策を講じるか?
どの対策も「これで解決だ」と納得できるものがないから、ないよりマシと思われる対策を次々と講じている。しかし、
(1)真の原因が不明だから問題は解決しないし、
(2)根本原因も特定されないから再発防止にもならない。

 

誤った指導で、この「なぜなぜ分析」まがいの活動をして形骸化している企業は数百社に及ぶと思われる。

1.9 病院の診察

診察腹痛で診察を受けると、医師は何をするだろうか?「なぜ、腹痛があるか?」と、「なぜなぜ分析」を始めるだろうか?

 

要因展開説では、腹痛の原因になり得るあらゆる病名を列挙し、それぞれについて「なぜ」を繰り返す。

 

そして、怪しいと思った5つほどの病気の薬を処方する。
しかし、データをとらないから真の病名が分からず、薬を服用しても病気は治らない。データを取らずに「なぜ?」と考え込んで病名を列挙する医師に出くわしたら、殺される前にさっさと逃げた方がよい。

 

正しい診察方法には2つの道がある。
・第一は、データ収集と解析
・第二は、CAPDサイクル

 

(1) データを収集し解析(データの意味を読む)する方法
最初は問診である。患者に自覚症状を尋ねる。「どの辺が,痛むの?」「鈍痛? ちくちく痛む?」「いつから傷み始めた?」「何を食べた?」

 

次は、患者の顔色、のど、体温、血圧など、簡単な検査を始める。
病名が決まらないと、さらに必要に応じて血液検査、レントゲン、CT、MRI、内視鏡~という具合にデータの収集と解析を繰り返す。ここでも適切なデータ収集と解析をするのに必要なのは、その分野の知識(=医学的な知識・経験)であって、「なぜ?」と訊くような単純な活動によるものではない。

 

(2) CDPAによる場合
患者の症状から病気の候補としてA・B・Cの3つほどの候補がある場合に、試しに薬を処方する。
・まず、Aの治療薬aを処方して様子を見る。もし薬が効いたら、病気Aが原因である。
・それで病状が好転しなかったら、Bの治療薬bを処方して様子を見る。もし薬が効いたら、病気Bが原因である。
・同様に繰り返す。

この場合でも、「治療薬aでは好転しなかったがbで好転した」というデータ解析によって真因に辿り着くことに変わりがない。データ収集と解析の仕方が異なるだけである。

 

病名が判明して治療が完了したあと、患者はその病気を予防できなかった根本原因を知りたいから「なぜ、予防できなかったか?」と自問する。つまり誰しも「なぜなぜ分析」を試みる。飲酒、麻薬、タバコ、不規則な生活、過食、運動不足、と言った典型的なものは反省できるが、それ以外は定期的な健康診断ぐらいしかできない。

 

残念なことに病気の予防管理は医学的知識を要し、また現代の医学では不明なことも多く、「なぜ?」を繰り返しても素人には簡単ではなく管理の欠陥は分からずじまいになることもある。
しかし、できる範囲で「管理の欠陥」を認識し、是正する努力をしなければならない。

 

以上のように、「なぜなぜ分析」は真の原因を追究する際には適用されないことが分かる。

2. 深掘りと浅掘り

2.1 深掘りとは

犬の深掘り深掘りとは、物事を深く穿って見ることである。
事故が起きたとき、問題を解決するために真因を特定しなければならない。

 

最初に見つけた原因は、それが真因か、見かけの原因か、区別しなければならない。真因ならば対策を講じて問題が解決するが、見かけの原因に対策を講じても問題は解決しない。それを区別できるためには、その方面の詳しい知識(固有技術)が必要になる。

 

真因が判明し是正し問題が解決したら、さらに再発防止に向かって管理システムの根本原因を特定する。そのような対策を、なぜ、事前に打てなかったか。この場合にも、根本原因の深掘りを行う。これが「なぜなぜ分析」である。

2.1.1 真因への深掘り

固有技術を持つ人は、見かけの原因か、真因か、区別がつく。
「ヒューズの溶断」は、電気に詳しい人は見かけの原因だとすぐに分かる。電気を全く知らない人は「ヒューズが切れたら、新しいヒューズや太い銅線をつければいい」と考えてしまう。このように、見かけの原因の背後に潜む真因を探すことを「深掘り」という。真因の深掘りは、データ収集と解析によって行う。

 

問題が起きると原因調査に入るが、真っ先に見つかる原因は見かけの原因(例:ヒューズが溶断、ブレーカーのダウン等)かも知れない。真の原因(真因)は、見かけの原因の背後にあるから、
・原因の原因、
・そのまた原因、
~という具合に追究しなければならない。

 

トヨタの大野耐一氏は、著書「トヨタ生産方式」の中で「深掘り」が大切であることを説いた。図は、大野氏からの引用である。機械が故障停止した事故で、ヒューズの溶断という見かけの原因に対して「なぜ」を5回繰り返し「濾過器がなかった」という真因に辿り着いた事例が紹介されている。

トヨタ式

大野氏は、これが「なぜなぜ分析」であると考えたようであるが、2つの点で間違っている。一見「なぜ」を繰り返したことによって真因に辿り着いたように見えるが、実は違う。

 

真因が分かったのは、
・ 機械の修理に関する知識(固有技術)を持つこと。
・ 固有技術に基づいて、データの収集と解析を繰り返したこと。

~によるのであって、素人が「なぜ」を繰り返したところで何も得られないし、プロであってもデータの収集と解析をしなければ何も得られない。
ところが真因が分かった後も、さらに「なぜ」を続けるバカ(自称専門家)が大変に多い。
その例を「2.2 浅掘りとは」に示したので参照して欲しい。

2.1.2 根本原因の深掘り

「なぜなぜ分析」は、「root cause analysis」 であるが、root とは何か?

コンピュータ関係に詳しい人は、よく、ルート・ディレクトリーという用語を使う。それは階層構造になっているホルダーの最上位のホルダーのこと(下図参照)。ルート・ホルダーの中に下位のホルダーが2つ入っていて、それぞれの中にさらに下位のホルダーが入っている。要するに、樹木でいえば幹の根っこに近い根もとである。だから「根本」という。

ルート

多数のトラブルの管理欠陥はとりあえずいくつかあるが、突き詰めていくと次第に少数の欠陥に絞られ、さらに突き詰めると1~2個の根本原因に絞られる。これが「なぜなぜ分析」である。

 

具体例を考えよう。
作業者がうっかりして別の部品を取付けて、そのまま出荷されてクレームになった。
真因は「うっかりミス」=「ポカミス」である。真因だと判断する理由は、ポカミス対策をすれば問題が解決するから。

 

そこで、問題解決のために、
・別部品の取付が不可能になる対策
・別部品の取付を検知する対策

のいずれかを講じて解決したとしよう。

 

しかし、これで再発が防止できた訳ではない。次は「他の作業」でポカミスが起きるからだ(モグラ叩き)。
人は誰でもポカをすることを皆が知っているのに、なぜ、事前に予防策を講じなかったか。ここでも深掘りが必要であり、これが「なぜなぜ分析」である。

 

図を見よう。
小枝の先端でトラブルが起きており、これらを予防できなかった共通の根本原因がある。

樹木

「なぜ、予防できなかったか」と追及すると、何件かのトラブルに共通の管理欠陥が見つかる。
例えば、3件のポカミスの共通の管理欠陥は、事前にポカミス対策が必要性を判定する工程FMEAを実施していないと判明する。これがとりあえず、第1の根本原因である。

 

トラブルの予防ができなかった根本原因にも階層があって、深掘りをすることによって次第に収斂する(多数から少数にまとまって行く)ことが分かる。このように多数から少数にまとまる方向に辿ることをボトムアップという。その言葉の由来は、多数の社員が底(ボトム)であり、深掘りすると、課長、部長、役員、社長という具合に次第に少数になることを意味する。

 

上の例で、工程FMEAを実施していないことが根本原因だとして、その実施を決定してよいか?
工程FMEAを実施しようにも、工程設計者も設計審査員も、誰も工程FMEAを知らない。それなら生産技術者の全員に工程FMEAの講習を受けさせように決めてよいか。
工程FMEAにも流派があって、研究者・指導者によって大きく違う。どれにするか判断できる人もいない。

 

さらに、FMEAを実施してポカ対策が必要だと判明しても、それに必要なFA技術者がいない。なにしろ経営陣は、売上・利益第一主義であり、技術者がFMEAの講義を受けて設計に時間をかけるようなことをOKしない。

 

さぁて、困った。
何を根本原因として特定し、何を対策にすればよいか決めかねる。そうです。FMEAをやっていないという根本原因の奥に、より根本的な原因が潜んでいる。

 

そういう場合は、最高経営責任者が司会者になって「なぜなぜ分析」をしなければ再発防止ができないことになる。
最も適切なのは、最高経営責任者が委員長になって品質管理会で「なぜなぜ分析」を行ことである。

2.2 浅掘りとは

そもそも「浅堀り」などという言葉が、正式な日本語として存在するのか?
辞書には見当たらないが、「浅掘り用ドリル」などと実務では使うらしい。余談はさておき、あえて浅掘りの話をするのには訳がある。

 

A君は、トヨタ方式の講習で、「なぜ」を繰り返して深掘りをすれば真因が見つかると教わった。だから「なぜ」を繰り返すことは深掘りだから、よいことだと思い込んでいる。あるとき作業者がポカで不良品を作ってしまった件で、A君が「なぜなぜ分析」をした。

 

正解を先に示そう。
ポカミスは真因だから、ポカミス対策をすればよい。真因をさらに深掘りすることは無意味である。しかし、そんなことはお構いなしだ。真因であろうがなかろうが、とにかく「なぜ」を繰り返そうとする。下図の上半分がそれである。

 

ポカから発展

 

1. なぜ:なぜ、ポカミスをしたか?
答えとして、
・ 他人と会話してうっかりした
・ 昨夜、寝不足で
・ 考えごとをしていた
などがあり得るが、本人に訊いたら寝不足だという。

 

2. なぜ:寝不足したか?
答えとして、
・ 麻雀をした
・ 夫婦喧嘩をした
・ 息子の非行で悩んでいる
・ 友人が交通事故を起こした

その他、無数にあり得るが、本人に訊いたら夫婦喧嘩だという。

 

3. なぜ、夫婦喧嘩をしたか?
答えは無数にあり得る。
このまま続けると、益々対策が難しい原因候補が無数に存在する。その一部に対策を打つことになり、再発は全く防止できなくなる。

 

このように、発散すること(数が増える方向に向かうこと)をトップダウンという。浅掘りは、トップダウンに少数から ⇒ 多数に拡散することをいう。

 

ポカから発展

 

反対に、図の上半分のように1~2個の根本原因に収斂するのが正しい。これが「なぜなぜ分析」であって、このような収斂するアプローチをボトムアップという。

 

ところが驚く勿れ、A君のような人が平気でホームページで「なぜなぜ分析」を解説し、本を出版し、有料のセミナーまで開催している奴らが多数いるではないか!!

→ 目次へ

(以上)