< 新幹線台車の亀裂、再発防止策は? | 客観説TQM
  • 古典品質管理からの脱却

台車枠の亀裂2017年12月11日、新幹線「のぞみ」の台車枠に亀裂が生じた。

原因は、7mm以上必要な肉厚が溶接部の削りにより最小で4.7㎜しかなかったことにあると推測される。

 

メーカーの川崎重工が台車枠の底部を不正に削った2007年当時、現場の兵庫工場に台車枠の削り込みを禁止する工程設計になっていた。 しかし現場では、溶接部の最小限の削りを許容した別の規定を誤って適用。ずさんな製造工程や品質管理体制で、欠陥製品が出荷されていた。

 

以上の事故に対する再発防止策が発表された。概略次の通りである。

1. 車両カンパニープレジデントを筆頭とする品質管理委員会を設置する。
2. 品質保証本部による初品製造過程におけるチェックポイントを増やす。
3. 製造部門に品質管理部門を新設し、工程内のプロセス確認、作業指導票を含めた書類監査、作業者の教育内容を刷新する。

 

しかし、これで再発を防止になるとは思えない。
根本原因を明確に特定していないからだ。

 

そもそも「削ってはならない」と告知したことを守れないという単純な現象に大げさな対策は不要だ。
とりあえず改善すべき点は、次の2つである。

  1. 工程FMEAを実施していない。
    そのために生じた「不順守」という故障モードに対策を講じていない。
  2. 品質保証部が、工程の順守を監視して報告するのを怠ったことに触れていない。

 

焦点がぼけたままの状態で、「あれも改善しこれも強化し」というのは、やたら人件費が増えるだけで、再発防止の効果がない。焦点がぼけているため、上に発表された品質管理委員会、品質保証部、新設の品質管理部も「形式を整えただけ」で役目を果たさない恐れがある。

 

特に問題なのは、製造部門に品質管理部門を新設するという点だ。
その新設する品質管理部門は何をする人達か?

  1. もし品質管理をする人達だというなら、これは全社的品質管理を破壊することであって最悪の事態だ。
    つまり、それ以外の社員は品質管理をしないという昔の習慣への逆戻りである。
  2. もし発表の通りに、工程内のプロセス確認、作業指導票などの書類監査をする人達だというなら、それは品質管理ではなく品質保証である。
    であれば、従来の品質保証部は何をしておったのか?という問題になる。

 

製造部門は、それ自体が品質管理部門である。
なぜなら、もともと品質・納期・コスト・安全・環境保護を管理する部門だから。

技術部門も資材部門も、同様に品質管理部門である。

 

この品質管理部門であるところの製造部門に「品質管理部門を新設する」とは、どういう意味だろうか?
魚屋の店舗に魚屋を新設することの意味が分からない。

 

製造品質を管理する人は、製造品質を作り込む人(=すなわち、作業者と作業者の上司)だけである。
もし、この他に品質管理部門を設けるなら、
作業者やその上司は品質の作り込み(=品質管理)をしないことになる。

 

川重車両カンパニーの品質保証本部長は、

「現場が自分たちで何とか(解決)しようとして、設計部門に伝わっていなかった」

と他人事のようにコメントしたが、現場の品質管理状況を監視し問題点を把握して関連部署や上層部に報告するのは、他ならぬ品質保証本部長ご自身の役目ではないのか?

 

再発防止の目的で「なぜなぜ分析」を正しく行うなら、

「品質保証本部長は、なぜ、役目を果たせなかったか」

という会社の管理システムの欠陥に辿り着かねばならない。

 

本件で最小限度に確認しなければならないのは、次の事項である。
・工程設計(=機能設計と信頼性設計)を行ったか?
・FMEA(=違反が起きない対策の評価)を実施したか?
・工程設計について、設計審査をしたか?
・品質保証部は、工程設計の順守を監視したか?
・品質保証部は、不順守があったとき、経営上層部に報告しているか?

 

つまり、本来の「当然のこと」をすればよいだけのことだ。
「基本に戻れ」である。

川重がこれらに全く触れていないのは、「なぜなぜ分析」を正しく行っていないからだと思われる。

(以上)