< FMEA 故障モードと影響の解析=事故の予防 | 客観説TQM
  • 古典品質管理からの脱却

cap-fmea製品や工程などの「故障の起きにくさ」、つまり信頼性を評価する手法・活動である。製品の故障モードや工程の故障モードの意味、影響の意味、評価の仕方について具体例を説明する。当研究所が開催するFMEA/FTAセミナーの予習にご利用ください。

現在募集中のセミナー

申込状況


FMEA 総合目次

第1章 FMEAとは

第2章 設計FMEA

第3章 工程FMEA

第4章 医療FMEA

緑線

第1章 FMEAとは

第1章 FMEAとは

1.1 FMEA の意味

1.2 FMEAの役目

1.3 利用分野

1.4 故障モード

・トップダウン

・ボトムアップ

・故障は千差万別

1.5 構造と機能

・故障と故障モード

・構造とは?

・機能とは?

・影響、原因とは?

1.1 FMEAの意味

FMEAは、Failure Mode and Effect Analysis の頭文字で、「故障モードと影響の解析」と翻訳される。システムの信頼性を評価する手法・活動の一種である。具体的には、製品や工程などの「故障の起きにくさ」を評価すること。そうは言っても初心者の方には分かりにくいから、具体的な例を示そう。

出張講習

ガスコンロの設計において、ゴムホースの信頼性を評価した事例です。

ガスホースfmea

 

・一番左に「品名:ホース」とある。つまり、ホースについて信頼性を検討する。

・「故障モード」は、起こり得る構造破壊(potential failure mode)である。この場合は「材質の劣化」である。

・その原因と考えられる要因は、「経年変化」だ。

・「影響」は、故障モード(材質の劣化)が進むとクラックが生じてガス漏れになる。

・「対策」として、3~4年に1回のガス業者による「法定点検」を行う。

・以上の「設計状態」の信頼性を評価すると、影響(a)・頻度(b)・検知(c)のいずれも2の評価で、総合評価:RI=2で合格になっている。

出張講習

と、まぁ、こんな具合に評価する訳だ。これでイメージだけは掴めたかな?

 

 

1.2 FMEAの役目

なぜ、こんなことをするか?
故障しないシステム(製品や工程)になっているか、設計を評価するためだ。

 

よくウェブサイトなどで、
・事故を未然に防止するため
・トラブル予測・未然防止のため
・潜在的なリスクを排除するため

などと表示されているが、これは真実ではない。なぜなら、不具合には、

ⅰ.設計通りの製品なのに起きる不具合
ⅱ.製品が壊れて、設計通りではなくなった故に起きる不具合

~という2つのケースがあり、FMEAが果たす役目は後者のみだからだ。
例えば、設計通りに出来上がった新品の時計が毎日10分遅れるという不具合は、FMEAでは予防できない。最初は狂わなかったが数年で狂うようになったとか、ちょっと衝撃を与えたら止まってしまった等の不具合はFMEAの出番だ。

 

また、設計された製造工程の通りに製造して発生する不良も、FMEAでは防げない。つまり、FMEAが対象にしている不具合は、

設計された状態の変化(破壊)

に限る。この「設計された状態からの変化」=構造の破壊のことを「故障モード」という。これについては、「1.4」で後述する。

1.3 利用分野

1.3.1 現在の主な利用分野

FMEAはどの業務分野でも利用が可能・有益であるが、現在は主に次の3分野で利用されている。

設計

ⅰ.設計FMEA:
製品が故障せずに本来の機能を果たすように設計されているか否か、設計を評価する。

 

ⅱ.工程FMEA:
生産工程などの工程が故障せずに本来の機能を果たすように設計されたか否か、工程設計を評価する。

しかし、本来はあらゆる業務工程を設計しFMEAを行わねばならない。

工程

・ 営業の受注契約手順、
・ 資材部の購入契約、
・ 外部業者との委託契約

 

これも、それぞれの品質・納期・コストを確保するための重要な手段である。

 

看護も現場ⅲ.医療FMEA:
医療業務の工程が、故障せずに本来の機能を果たすように設計されているか。医療業務の設計を評価する。

 

以上、どれも多少の表現の差はあるが、故障しないシステムを作る目的である点で同じだ。ただ残念なことに、各分野とも誤った指導を受けてFMEAが形骸化しているのが実態である。その誤りについて、ここでは触れないが、各論で詳細に説明する。

1.3.2 望ましい利用分野

・建設工事の手順や規則
・営業の受注や資材の発注における手順や規則
・銀行や証券会社の業務手順や規則

についても、確実に順守させるためにFMEAが有効である。

1.4 故障モード

これについて、JIS z 8115 に次のような定義している。

・「故障」とは規定の機能を失うこと。
・「故障モード」とは故障状態の形式による分類。
(例えば、断線、短絡、折損、磨耗、特性の劣化など)

 

この定義の意味をごく普通に解釈すると、

ⅰ.故障」とは規定の機能を失うこと、つまり設計上予定した機能を果たさない状態をいう。ここには、格別の問題は見当たらない。

ⅱ.「故障モード」とは「故障状態の形式による分類」~という表現は、理解が困難である。しかし、その後に「例えば、断線、短絡、折損、磨耗、特性の劣化など」とあるので、構造破壊を意味することが明確になる。

 

なぜ、故障モードを考える必要があるのだろうか、以下、考えてみよう。

 

1.4.1 トップダウンの弊害

FMEAは、故障しないシステム(製品・工程)を設計することを目的に、設計を評価する活動だ。
「あっ、そう? そんなら、起こりそうな故障を列挙して、次に原因になりそうなものを推測して、対策を打てばよいではないか?」と思える。

 

事実、FMEAが実施される以前はそうやって来た。そして、そのやり方では事故を防げないことをさんざん経験した。最近の例では、2017年12月11日、新幹線「のぞみ」の台車枠に亀裂が生じた事件。メーカーの川崎重工が、工程FMEAを正しく実施していれば防げた事故であった。

 

先に機能を挙げ、次に故障を挙げ、そして「なぜ、故障は起きるか?」と追跡して要因を挙げやり方では、FMEAの役割を果たせない。そのことが分かる事例を紹介しよう。あるサイトのFMEAは、次のようなやり方である。

 

・冷却ファン(組)という製品名を挙げる。
・機能として、3つを挙げている。
・電装ユニット内の熱を放出
・振動がなく静か
・メンテ作業が容易

 

すると、故障もこれら3つの故障しか扱わないことになり、「火災の予防」がもれてしまう。さらに、それぞれの故障の原因も、思い付きで列挙するからもれてしまう。これでは、FMEAにならないことが分かる。

1.4.2 ボトムアップが正しい

では、どうすればよいか? それを解決するのが「故障モード」の考え方だ。次の図を見よう。トップダウンだと、故障をとりあげる際に、思いつかなかった故障がもれる。さらに、ある故障を出発点にして「なぜ故障が起きるか?」と下向きにアプローチすると、だんだん数が多くなって「思いつかない原因」がもれてしまう。

bottom-up

ところが、下に故障モードa・b・c・d….を列挙して、そこから、
・このねじが緩んだらどうなるか、
・このピンが折れたらどうなるか、

~という具合に、ボトムアップにアプローチするのが、FMEA、即ち、

故障モードと影響

の意味である。

 

上の図から分かることがもう一つある。故障がなぜ起きるか? と上から下向きに進めると、
・製造不良が故障モードになる
・故障も故障モードになる

~という珍現象が起きる。

 

設計に製造不良が含まれるはずがないのに「製造不良が登場するやり方」、および、「故障と故障モードの区別がつかないやり方」は、このトップダウンという誤りに起因することが分かる。

 

では、故障モードは列挙の過程でもれないのか? 思いつかない故障モードがもれることはないのか? 実験してみよう。

 

取付けねじの故障モードは何?
錆び、曲がり、折れ、緩み、(回転を与える)頭部の破損、と言ったところだ。新米の技術者なら、思い付かない構造破壊があるかも知れない。だから、その企業で扱う部品の故障モードを会議で協議して、一覧表にまとめれば一段落である。

1.4.3 故障は千差万別

故障モードは少数

故障モードは、品目ごとに限られたものしかない。例えば電線には、断線・ショート・変形ぐらいしかない。その電線を使用している製品はおびただしい数にのぼり、どの製品も断線が起きれば故障する。しかし、断線は同じ故障モードであるが、故障は製品によって、使われる場所によって全部異なる。

 

従って、一旦、断線という「行きやすい点」に行って、そこから製品ごと、場所ごとの影響を推測すれば抜けもれを減らす手段となる。

 

天気予報故障の予測の難しさ

故障の予測の難しさは、「何が起こるか」の質的予測が必要なところにある。例えば天気予報では、発生する事象は晴れ、曇り、雨、雪などに限定され、そのいずれが起こるかの蓋然性を定量的に定めることだ。

 

しかし新しい技術、製品、工程で起こる故障を予測することは容易でない。「想定外」の危険が常につきまとう。
FMEAは、この「想定外」の故障や災害を抜け漏れなく予測し、対策が十分かどうかを定量的に判定する手法だ。

1.5 構造と機能

1.5.1 故障と故障モード

これについて、1.4 故障モード にJIS詳しくの定義を説明した。
すなわち、

ⅰ.故障」とは規定の機能を失うこと、つまり設計上予定した機能を果たさない状態をいう。

ⅱ.「故障モード」とは、「断線、短絡、折損、磨耗、特性の劣化など」のような構造破壊をいう。

 

ところが、この故障と故障モードを区別できない研究者やウェブサイトが圧倒的に多い。それはおそらく、構造と機能の理解が不足することによると思われる。この違いを説明しよう。

1.5.2 構造とは?

故障モードが構造破壊だというなら、そもそも構造とは何か? いわゆるモノの製品の場合はおよそ見当がつく。そう、次ようなものである。
・材質
・形状
・大きさ
・組合せ

 

組立品(例えば、完成組立品やユニットなど)の故障モード は、この組合せの「接続の破壊」である。これを、インターフェースの故障モードという。例えば、差込みプラグの抜け、半田割れ、接着のはがれ、ねじの緩みなどがこれに該当する。

 

では、工程の構造、医療業務プロセスの構造とは、何か? 実はこれが大問題なのである。大学教授やセミナーの講師がこれを誤って指導しており、この問題についてはそれぞれのところで解説しよう。

1.5.3 機能とは?

次に、機能とは何か? これは誰でも知っている。そう、働き・役目、である。では、その主語は何か? 何が働くのか? これが意外に知られていない。

 

われわれは、機能を直接に設計することができない。製品設計の図面を見ると、そこに記載されているのは構造だけである。
必要な機能を果たすように構造を設計する。そして、その構造が機能を果たすのである。

1.5.4 影響、原因とは?

構造破壊が故障モードであり、その影響が故障(及び、その結果生じる災害)である。
だからと言って、故障モードが原因で故障が起きると考えてはならない。

 

東大教授:久米均氏から引用すると、次のようになる。

原因 → 故障モード → 故障(故障モードの影響)

よく見る間違いは、「故障の原因」・「故障の影響」という理解の仕方である。
そのように間違いを丸出しにするぐらいなら、単に「原因」・「影響」と書いた方がよい。

tytle_bar

第2章 設計FMEA

第2章 設計FMEA

2.1 ガスコンロの事例

2.2 評価

・絶対評価4点法

・誤った評価基準

設計設計FMEA (design FMEA) とは、「製品が故障しないように設計されているか」、製品設計を評価する手法・活動を指す。

 

第1章で説明した理論を、ここでは具体例に沿って説明しよう。

 

題材は、「家庭の奥さんでもFMEAが理解できるように」との思いで、ガスコンロをとりあげる。しかも、一番理解しやすい「ゴムホース」についてやってみよう。「なぁ~んだ、ゴムホースかぁ~」なんて言わないで欲しい。ここから学ぶことは沢山あること、請け合いだ。

2.1 ガスコンロの事例

手順を下のガスコンロのホースの事例で説明しよう。

 

ガスホースfmea

 

1.品名・部位:アイテムとも呼ぶ。
故障モード(=構造破壊)が発生し得る部位を示す。組立品の名称だけを記載しても不可である。

 

2.故障モード:構造破壊をいう。
「構造」とは、材質、形状、寸法、組合せをいう。その変化が故障モードである。
ガスホースでは、材質劣化、クラック、熱溶融等のうち、起こり得るものを挙げる。
組立品の場合、接続(ねじ、ハンダ接合、カシメ結合、圧入、溶接、差し込みなど)の破壊が故障モードになる。

 

〔注意〕
回転しない、振動や騒音が出る、などは故障であって故障モードではない。また、不良品は設計した通りの製品ではないので故障モードではない。不良の問題は、工程設計や工程FMEAで扱う。

 

3.要因:その故障モードが発生するメカニズムを指す。本件では経年変化である。

 

4.影響:故障モードが引き起こす結果である。本件では、故障モード(材質の劣化)の影響として、

⇒ クラック ⇒ ガスもれ ⇒ ガス爆発・火災・死亡

など連想される。しかし、「ガスもれ」と記載するだけで(その先は常識で分かるから)十分である。

 

5.対策:故障モードについての対策
「対策」の記載欄がないFMEAシートは、評価の対象がないから誤り。
「対策」は、自然に備わっている強度なども含まれる。

対策には、次のようなものがある。

ⅰ) 影響を回避・軽減する「影響対策」
ⅱ) 発生を防ぐ「頻度対策」
ⅲ) 原因・故障モード・初期の影響などを検知して、大事に至る前に対処できるようにする「検知対策」

しかし、対策が3種類あるからと言って、対策の記載欄は1個だけにしなければならない。検知対策であっても、検知を改善し、さらに発生頻度を改善し、影響を回避する場合があるからだ。本件のガスコンロの例が、まさに、それに該当する(後述)。

6.影響(a):「ガスもれ」という影響を軽減する対策の程度を4段階で評価する。

7.頻度(b): 「クラック」という故障モードの発生を防ぐ対策の程度を4段階で評価する。

8.検知(c):大事に至る前に対処するために危険を検知す対策の程度を4段階で評価する。

9.積:a×b×c を計算する。

RI:危険指数 (Risk Index:RI)

危険指数RI

を計算する。これは、その故障モードについての総合評価(合否判断)をするための指数だ。

 

〔注1〕a、b、c、および RIのスコアリングは次のように行う。
a、b、c、の判定は、どれに一番近いかで決める。

スコアリング

〔注2〕 a、b、c の評価は独立ではない。影響の被害が大きければ、それだけ頻度対策や検知対策は厳しく要求される。このように、故障モードごとに対策の合否を判定するやり方を絶対評価4点法と呼ぶ。現在、理論的にも実用的にもこれが最も優れた方法だ。

 

本件のガスホースの場合、対策は4年に1回の法定点検だけ。実務もそうなっているが、これで a、b、c、RIの値は表のようになり、合格となる。

 

ガスホースfmea

なぜこうなるか?
FMEAを本格的に勉強して「考える力」を身につければ容易に解答を出すことができる。では、続けて「評価」を見ていこう。

2.2 評価

2.2.1 相対評価4点法

上の事例では、故障モードごとに対策の合否(対策十分・不十分)を評価した。その際に採用した評価基準は、下に示すスコアリングだ。

スコアリング

この評価基準によって、本件のガスコンロのホースについて評価をしてみよう。

 

対策は、「法定点検」となっている。これはガス事業法に規定されており、ガス事業者は3~4年に1回、ガス器具の点検が義務付けられている。東京であれば東京ガス、大阪であれば大阪ガスがこれに該当する。プロパンガスの供給者も同様に適用される。

 

従って、ガスコンロの設計者が特に対策せずとも、この対策は自動的に実施される訳だ。3~4年に1回点検すると、もしゴムホースの劣化が進んでいると「白化」という現象がみつかる。これは微細な亀裂が生じて空気が入り込んで白くなる現象だ。ホースを継ぎ手(いわゆる、竹の子)に押し込んでバンドで締めたあたりの「力が掛かっている部分」が真っ先に白化する。

 

「白化」は非常に目立つので、見逃すことはほとんどなく、検知対策として十分だ。
⇒ 評価は、c=2 となる。

 

すると、ホースは交換されるから、故障モードの進行はリセットされ、発生対策としても十分だ。
⇒ 評価は、b=2 となる。

 

すると、影響もリセットされ、影響はほぼ回避され、影響対策としても十分だ。
⇒ 評価は、a=2 となる。

ガスホースfmea

総合評価は、

危険指数RI

を計算すると、RI=2 となる。

2.2.2 誤った評価基準

下に示すのは、頻度の表基準として公開された、あるサイトからの引用だ。

機械研究所評価基準
これは頻度の評価基準になるだろうか?
なるほど、紙コップや割り箸などの製品が使用中に壊れる頻度なら、年に1回程度を「まれに=1」と評価してもよいと思われる。しかし、パソコンになると年1回では問題だね。まして航空の墜落を招きかねないケースだと、年1回は「頻繁に=4」と評価すべきと思われる。

 

だから、影響・頻度・検知難度をそのまま評価すると、製品ごとに基準を変えなばならず、評価基準にならない。
同じ航空機でも、「エンジンの破損」と「客席の椅子のキズ」とで基準を変えねばならず、到底、評価基準そのものが立ち行かなくなる。

tytle_bar

第3章 工程FMEA

第3章 工程FMEA

3.1 工程FMEAとは

3.2 ピン入れ忘れの事例

3.3 工程設計

・工程の構造

・工程の機能

3.4 工程の故障モード

・故障モードの意味

・不良モード説

3.1 工程FMEAとは

工程作業Process Fmea の頭文字をとって、PFMEAとも呼ばれる。
工程の故障が起きないように設計されているか、工程の信頼性の点で設計を評価する手法・活動の一種である。

 

ところで、工程といえば、すぐに製造工程を思い浮かべてしまうが、実はそうではない。

・医療活動のプロセス
・受注契約のプロセス
・購買・委託の発注プロセス
・経理・会計プロセス

 

~なども工程設計をしなければならない。
きっちりと順守するためには、工程FMEAを実施する必要がある。

3.2 ピン入れ忘れの事例

ある製造工程の設計では、
・作業者が部品の穴にピンを入れ、
・それを圧入機で圧入し、
・次の工程に送るようになっている。

 

このままだと、作業者がポカ(うっかりミス)で「部品にピンを入れずに」圧入機にかけ、次工程に送るという故障モードが起こり得る。
下のフォーマットに従って、工程FMEAの順の概略を説明しよう。

 

工程ピン忘れ(1)
(1) 工程の記載欄:
工程のステップを特定する記載。

 

(2) 故障モードの記載欄:
起こり得る「工程設計に対する違反」を記載する。
例えば、段取りの間違い、作業ミス、機械の故障などである。
〔注〕不良品の発生や災害は故障モードの影響であって、故障モードではない。

 

(3) 要因の記載欄:
故障モードの発生メカニズムを記載する。
うっかりミスの発生メカニズムは、ポカである。

 

(4) 影響の記載欄:
不良項目、クレーム、ケガ、コスト高、納期遅れ、環境汚染、その他。

 

(5) 対策の記載欄:
故障モードの影響を軽減する対策、発生を防ぐ対策、大事に至る前に危険を検知して対処する対策など。

〔注〕評価の前に「対策」の記載欄がないFMEAは誤りである。

 

(6) 影響(a)の記載欄:
影響を軽減する対策が十分か不足か、4段階で評価する。

 

(7) 頻度(b)の記載欄:
頻度対策が十分か不足か、4段階で評価する。

 

(8) 検知(c)の記載欄:
大事に至る前に影響を検知して対処するするための対策は十分か、4段階で評価する。

 

(9) 積の記載欄:
a×b×c を計算する。

 

(10) RIの記載欄:
危険指数(Risk Index:RI)危険指数RI

を計算する。

a、b、c、および RIの判定は次のように行う。
a、b、c、の判定は、どれに一番近いかで決める。

 

スコアリング

 

「ピン入れ忘れのポカ」の対策として、
「ピンをセンサーで検知した場合だけ圧入機が作動する」ようにすれば、
次のように評価されて合格となる。

 

ピん入れ忘れ2

 

なぜ、このような評価になるか、詳細は講習会で説明する。
以上で、工程FMEAのイメージは掴むことができたと思う。

3.3 工程設計

3.3.1 工程の構造

工程設計は、次のような事項に関する細目を決定することだよ。
これが「工程の構造」になることに注意して欲しい。

 

1.人(man):作業や管理の担当者、関係者
2.機械 (machine):機械・装置・設備・工具など
3.材料 (material):工程で処理を受けるもの
4.方法 (method):作業や管理の方法
5.測定 (measurement):情報の収集と処理

 

以上の5つの要素を 5M と呼ぶ慣行がある。

時折、4M と称して測定(Measurement)を除外する指導例を見受けるが、実は測定が一番重要な要素だ。
これを除外するようでは、明らかに「偽物の指導者」だから要注意だよ。

 

なぜ測定が一番重要か?
・「この工程で何が求められているか」という情報が明確でないと仕事は始まらない。
・仕事の途中で問題がないか調査しないとトラブルを予防できない。
・「首尾よく成果が出たのか」という情報が明確でないと仕事は終わらない。
・トラブルが発生したら、調査しないと改善もできない。
これらは、全て測定だ。

 

ところで、「なぜ、5M を決めるのか」というと、トラブルを予防するためだよ。
・機械はこういうものを使え、
・段取りはこうして、
・どんな人に担当させて、
・材料はこういうものを使え、
・作業手順はこうでなければいけない、
・ここでこれを測定せよ、

~などと細々と指定する。そうしなければトラブルになるからだ。

3.3.2 工程の機能

5M を適切に決定・配置してプロセスの構造を設計すれば、この構造が次の5つの機能を生むことになる。

 

1.品質 (quality)
2.コスト (cost)
3.納期 (delivery)
4.安全 (safety)
5.環境保護 (environment protection)

 

以上の関係を図示すると、こうなります。

 

processの構造と機能

3.4 工程の故障モード

3.4.1 故障モードの意味

上の図を見ると、工程の構造破壊によって機能障害が起きてトラブルになることが分かる。
ここに、「工程の故障モード」が5M に関する違反を指すことが明確になる。

 

工程設計には 「5M に関する様々な指示」が規定されるが、それらは必ず順守されるように出来ているのか?
これが信頼性だよ。
「順守されるための対策」が十分かどうか、工程設計の指示ごとに評価するのが工程FMEAだ。
その他は、設計FMEAと同じ。

3.4.2 不良モード説

工程の故障モードを「不良モード」を意味すると唱える説がある。

 

故障モード」とは、
・製品設計では、折損、磨耗、短絡などの不具合、工程設計では、寸法不良、加工キズなど。
・医療活動であれば、薬剤の選択誤り、カルテ記入忘れなどのエラーが相当するので、ここではエラーモードと呼ぶことにする(トラブルモードと呼んでもよい)。

 

上の考え方を吟味しよう。

 

前段の「製品設計では折損、磨耗、短絡などの不具合」が故障モードだ、という点は正しい。
しかし、それ以外は全くの誤りである。

 

(1)「工程設計では、寸法不良、加工キズなど」が故障モードだ、とする点。
それらは工程からの出力(機能)異常=故障である。

 

(2)「医療活動であれば、薬剤の選択誤り、カルテ記入忘れなどのエラーが相当するので、ここではエラーモードと呼ぶことにする」とする点。
故障モードは、人がエラーをすることに限らない。
次のような構造破壊も故障モードである。

 

・機械(故障)
・人(医師、薬剤師、看護師等の資格)
・材料(骨折患者が内科が扱う等)
・方法(患者の取り扱い、機械の操作等)
・測定(血圧、血液検査、尿検査、CT、MRI等)

 

(3)「トラブルモードと呼んでもよい」とする点。
構造破壊(故障モード)もトラブルだし、機能異常(故障)もトラブルである。
「トラブルモード」という呼び方は、故障モードと故障の区別を見失うから、絶対に使ってはならない。

 

(4) 医療FMEAで使われる「不具合様式」という用語
構造破壊(故障モード)も不具合であり、機能異常(故障)も不具合だ。
トラブルモードと同様に誤った用語である。

tytle_bar

第4章 医療FMEA

第4章 医療FMEA

4.1 医療FMEAと

4.2 誤っている点

・工程設計がない

・不具合様式説

・評価基準の誤り

4.3 設計有無の比較

・現場のコピー

・設計を行う場合

4.1 医療FMEAとは

工程MEAを医療の分野に導入したものを「医療FMEA」と呼んでいる。

 

看護の現場

医療業務のうち、患者(処理を受けるから、5Mでいえば材料)の様態によって臨機応変に対応しなければならず、プロセスとして設計することができない業務も存在する。
この場合に、工程設計が存在しないから、工程FMEAもあり得ない。

 

従って、工程設計が可能な業務については普通の工程FMEAを行えばよい。
医療FMEAという特殊なFMEAが存在する余地はない。
これが正当な考え方である。

 

ところが、どっこいだ。
医療の分野に最初に導入を図った研究者が、いろいろな誤りを犯して「特殊な工程FMEA」に姿を変えてしまい、本来の工程FMEAから軌道が外れたのである。

 

だから、「医療FMEA」という特殊な名称を付けることになってしまった。
繰り返すが、医療FMEAと称して医療の分野で指導されているものは誤ったやり方である。

4.2 誤っている点

4.2.1 工程設計がない

医療分野に工程FMEAを持ち込んだ研究者は、工程設計について次のように述べている。

 

業務工程の洗い出し
(中略)事故を未然に防止するには、現場で、いつ、誰が、どんな風に業務を行なっているかを正確に把握する。
すなわち、日常業務のプロセス(工程)を明らかにした上でなければできない。
自院の業務を把握しないで他院での改善策や安全システムをそのまま導入しても、それが自院に有効であるのか、費用対効果が適切であるのかは不明である。

 

これをA説と呼ぶことにしよう。

(1) まず問題なのは、工程設計が先か、現場が先かである。
A説は、現場が先にあって、「現場を忠実にコピーしたものが工程設計だ」とカン違いしている。

 

コピーと設計は、全く違う。
設計とは、対策の束である。
あらゆる見逃せない事故を予防するために「こうあるべきだ」というものを設計する。
「現状はどうか」を設計するのではない。

 

ここでも普通の工程設計として、
・品質Q
・納期D
・コストC
・安全S
・環境E

~について問題が起きないようにプロセスを設計しなければならない。

4.2.2 不具合様式説

A説は、故障モードという呼び方は、医療の分野では不適切だという。
その根拠として、次のように説明している。

 

(1) モノは、変形、亀裂、などの故障モードを実態として把握できる。しかし、工程は動きや流れがあるので、VTR等による映像で記録しない限り実態で確認できない。そこで、機能の達成を妨げる実態を記述する工夫が必要だ。
〔誤りの指摘〕
モノの故障モードにも、VTR等による映像記録すらできないもの がある。例えば、新幹線の開業当初、高速度でトンネルに入ると気圧が下がり、機密に作ったトイレの内開きのドアが開かなくなった。この場合、故障モードは ”気圧の変化” である(同説:久米均・元東大教授)。上の理屈が全くの誤解であることが分かる。

 

(2) モノの場合には、機能はモノの動きや状態として表されるが、設計・工程・医療の場合は、人が果たすべき機能を阻害する実態が故障モードである。
〔誤りの指摘〕
故障モードは プロセスが果たすべき機能 を阻害するのであって、「人が果たすべき機能を阻害するもの」ではない。これも、全くの誤りである。

 

(3) アイテムとして、人(または、人を含めたシステム)を想定しているので、failure の訳を “故障” とするのは適切とは言えない。
〔誤りの指摘〕
アイテム(故障モードが発生するところ)は、人ではなく工程のステップである。
これも、全くの誤りである

 

(4) 筆者らは医療においては故障モードという表現は誤解を招きやすく適切でないので、「不具合様式」を用いることを推奨している。
〔誤りの指摘〕
「故障モード」という表現がどのような誤解を招くのか、全く説明がない。
のみならず「不具合様式」という用語は、工程の構造破壊の不具合か、機能異常の不具合か、両者の混同を招く最悪の用語である。

4.2.3 評価基準の誤り

医療FMEAを指導する、あるサイトが示す基準である。

 

resilient-頻度

 

なるほど、「かすり傷」を負う程度の故障モードの頻度評価なら、5年以上で1回は「ほとんど発生せず、1点」でよいと思われる。

 

しかし、「死亡」に至る故障モードだと、6年に1回が「ほとんど発生せず、1点」という評価はあり得ず、反対に「極めて高い頻度、5点」が適当と思われる。
つまり、評価基準として成立しないことが分かる。

4.3 設計有無の比較

上にの「4.2.1 工程設計がない」の項で述べたように、現場で行っている業務をそのままコピーすることを設計だとカン違いした事例を紹介する。

4.3.1 現場のコピーの場合

設計は、品質Q、納期D、コストC、安全S、環境Eを同時に考慮して「こうあるべし」というプロセスの計画である。従って、「トラブル対策の束」である。
ところが、現実は、昔から引き継いだ “自然発生的な業務プロセスが多く、それが医療事故を招いている。

 

次に示すのは、その例である。
外科手術で使用するガーゼを配って、患者の体内にガーゼを残さずに回収するプロセスである。

 

ガーゼ払出

 

1.「払出」
看護師がガーゼを配る。
これをうっかり忘れる場合が起こり得る(頻度=2)。
しかし、執刀医が催促する(検知=1)から影響はない(影響=1)。
その結果、危険度=2。

 

2.「数の未記入」
起こり得る(頻度=2)。
払出数と回収数を照合はできないが、
レントゲンで確認する手間の分だけの影響はある(影響=2)ものの、必ず検知する(検知=1)から、危険度=4。

 

3. 「数の誤記」
起こり得る(頻度=2)し、
ガーゼに遺残の危険があり(影響=4)、
検知できない(検知=4)から、危険度=32

 

この先、延々と続くが、ここで「おや?」と疑問を感じる。
「全ての場合にレントゲンで確認すればよいのに」という疑問である。
現場をコピーすることが工程設計だ、とする誤りがここにある。

4.3.2設計を行う場合

例えば、10個のガーゼ入りの薄いプラスチックのケースを納入させる。

新品ガーゼ

 

8個使用して元のケースに回収した状態に、異常がない。

正常回収ガーゼ

 

1個の回収もれがあっても、リアルタイムに異常が分かる。

正常回収ガーゼ

 

これだと、ガーゼを数えたり記録したり、回収後のガーゼを数えることも不要である。
言いたいの、FMEAをしても、もともとまずい工程は良くならない ということだ。

(以上)