< DRBFM、失敗から学ぶ設計審査 | 客観説TQM
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DRBFM

新製品の設計審査は、経験不足からいろいろな欠陥を見逃すことが多い。そこで、設計変更の際に、トラブルの情報が相当に分かっているから、そのデータを生かして精密に設計審査を行おうとするもの。

 

設計審査(desiign review)の一形態であって、design review based on failure mode の頭文字をとったものである。
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目 次

1. はじめに

2. 名称の由来

3. 手順

4. FMEAについて

4-1. 故障モードなし

4-2. トップダウン

1. はじめに

トヨタが始めたとされているが、そういう呼び方をトヨタがしたというだけのことで、同様の設計審査は昔から行われている。

 

問題は、これが設計審査なのかFMEAなのかという実質的な点である。基本的な知識を欠く指導者の中には「これはあくまでFMEAの一種だ」とする者もいるが、全くの間違いである。

 

これは広く問題点を拾い上げる設計審査であって、もし「故障」や「故障モード」が心配な点として浮かび上がったときは、これを契機にFMEAを実施すると理解するのが正しい。

2. 名称の由来

DRBFMは「失敗に学ぶ」活動の一種であり、従来の設計から学びつつ、設計変更を行うやり方である。FMEAにせよ設計審査にせよ、初めて行った製品設計の評価はゼロからの出発であるため情報が不足する。

 

ところが製品化してしばらくしてから設計変更をする際には、その時点までに起きたいろいろな失敗のデータが蓄積しているので、製品を構成する部品・ユニットなどについての評価は迅速・正確に行えるようになる。そのための設計審査をDRBFM(故障モードに基づく設計審査)という。

 

DRBFMを形式的に日本語で表せば「故障モードに基づく」設計審査ということになるが、実質は「失敗から学ぶ」設計審査である。故障モードでないなら、なぜ、”based on failure mode” などという名称になったのか? という疑問を生じることになるが、これが実に下らない事情なのだ。

 

工程FMEAで、「工程の故障モード」とは何か、理解できない人達がいる。彼らは、工程の故障モードという表現では意味が分からないから、次のような用語に使用するのがよい考える。
・製造工程なら「不良モード、 or 失敗モード」
・医療工程なら「不具合様式モード、or 不具合様式」

 

つまり、failure mode の意味を「何か失敗すること」と捉えるのである。なるほど、英語の failure は主に「失敗」の意味である。しかし failure mode という専門用語は「構造の破壊」を意味すると定義されているのであって、失敗を表すのに failure mode という用語を使ってはならいないのである。

 

「不具合様式」「失敗モード」などという変な用語を使う人がいるのは、この用語の意味を誤ったことが今日に至るまで尾を引いているのである。FMBFMという呼び方も、そのような故障モードの意味の取り違いから来ている。

3.  手順

一般に指導され、使われるフォーマットは、下に示すフォーマット(1)である。これに沿って、手順を概観してみよう。

 

フォーマット(1)の中に示した番号(1・2・3・~)は、説明のために追加した説明番号である。記載欄1~9は、予め設計者が記載し、設計審査チームが審査で検討した内容を10~17に記載する。

 

フォーマット(1)
drbfm-6
まず、設計者が記載する事項

(1)「部品」:設計変更する部品(or 新規部品)の名称を記載する。

(2)「変更内容」:材質をアルミダイカストから強化プラスチックに変更した~等。数部ての変更点を記載する。

(3)「機能」:その部品の役目、目的など。

(4) 設計者が抱いている「機能や商品性の心配な点」:

どのようなことを心配して設計したか、使用状況を理解して支障の恐れがある事項を記載する。騒音ヤキズなど。

〔注〕(3)と(4) に「機能」の欄があることに注目されたい。ここに「機能」を記載して出発するのはトップダウンを開始することを意味する。FMEAはボトムアップだから、DRBFMがFMEAではないことを顕著に表している。

(5)「要因」:設計者の心配がどのような場合に生じるのか。

(6) 「頻度」:要因や心配点がどのぐらいの可能性、頻度を大・中・小などで表す。

(7)「お客様への影響」:心配点の中には「組立作業者が作業しずらい」、「作業場に臭気が出る」など、いろいろあり得るが、特にお客様に対する影響を拾い上げる。

(8)「影響度」:お客様に対する影響の大きさを大・中・小などで表す。

(9)「設計遵守事項」:心配事項を解消するために設計者が行った設計上の処置。設計だけで処置できなかった事項も記載する。意見を出すのに役立つ書類(仕様書、図面、お客様の要求書、類似機種の不良やクレーム情報など)を事前に準備すること。

 

以下、ここからがDRBFMの設計審査が開始される。設計、生産、企画、品質、評価、CSなどのメンバーを集め、設計審査を行う。

製品にかかわる関連部門を集めて、設計者の視点からはもれやすい、お客様視点、営業視点、生産視点、信頼性の視点などから意見を出し合い、問題の未然防止を図る。

 

フォーマット(1) 再掲
drbfm-6(10)「他の心配点」:設計審査チームが抱く心配点であり、次のようなものがある。

・故障
・不良
・価格
・納期
・安全性
・環境汚染

(11)「他の要因」:設計審査チームが抱く「他の心配点」の発生要因である。「こういう場合」「ああいう場合」と、心配点の発生要因を挙げる。

(12) 設計審査チームが抽出した「他の心配点のお客様への影響」を記載する。

(13) 設計審査チームが抽出した「他の心配点」の優先度をA・B・C等で表す。

(14) 設計者が行った処置の妥当性の確認、追加すべき処置、対応不十分な処置を記載する。

(15) 結論として設計に織り込むべき処置 → 設計変更の修正、追加修正など。

(16) 結論として評価に織り込むべき処置 → 信頼性試験の追加・変更。検査規格への反映など。

(17) 結論として工程に織り込むべき処置 → 保存、静電気、湿度・温度、振動、混入、キズ防止、運搬等の管理。

 

フォーマット(2) 推奨対応の期限と責任者
recomendations〔追記事項1〕
設計審査は、「暇を見て行う」のではなく、優先的に進めなければならない。これが遅れると、全てが遅れるから。また、審査は適切でなければならず、厳しすぎても緩すぎても弊害を生じる。そのため、期限と責任者を明示しなければならない。

 

〔追記事項2〕
設計審査は、開発早期の段階から実施すること。

(1) 設計審査の結論として行うべき処置には、長期にわたる試験期間が必要なことも多く、設計審査を開発早期の段階から実施しなければならない。

(2) 試験の結果によっては、審査の見直しが必要となり、繰り返し設計審査をする場合がある。

 

以上が手順の概要である。

4.  FMEAについて

本件のDRBFMによっては、FMEAを行うことはできない。その理由は、
・故障モードの列挙がなく、心配点の列挙である。
・トップダウンになっている。

 

以下、これらについて詳しく述べよう。

4-1.  故障モードなし

フォーマット(1) 再掲
drbfm-6

フォーマット(1)をみると、故障モードという用語が使われていないことに気がつく。なぜだろうか?

 

故障モードについて、JIS z 8115 は次のような定義している。
「故障モード」とは故障状態の形式による分類。
(例えば、断線、短絡、折損、磨耗、特性の劣化など)

 

すなわち、故障モードとは、構造の破壊(壊れること)を指す。そのことを念頭においてフォーマット(1)をみると、全く故障モードには無関係であることが分かる。

 

「機能や商品性の低下」が故障モードだと説明する講師もいるが、全くの間違いである。設計変更によって機能や商品性の低下が懸念される点をピックアップするのは、広く問題点を検討する設計審査であってFMEAではない。

 

FMEAは、設計審査の前に行って、DRBFMチームにより検討の対象にしなければならない。その際にこのDRBFMの様式フォーマット(1)を使うのではなく、別途FMEAフォーマットで行わねばならない。

4-2. トップダウン

フォーマット(1)の説明番号3に「機能」記載欄があることに要注意だ。

 

フォーマット(1) 再掲
drbfm-6

「機能」から、

→「心配点=故障」

→「なぜ故障が起きるか」

→「要因を展開」

と進むと、トップダウンになってしまう。このことは、これがFMEAではないことを物語る。FMEAは先に故障モードを挙げて、そこからボトムアップに故障を追跡する手法であること、設計FMEA のページで学んで欲しい。

 

(終わり)