< 新国立競技場プロジェクトの破綻 | 客観説TQM
  • 古典品質管理からの脱却

旧国立競技場約55年前の1964年東京オリンピックのメイン会場となった旧国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)がある。これを解体して、2020年東京五輪のメイン会場となる新国立競技場を建設することになった。

そのデザイン選定の際に QDC一体管理の原則 に違反したために、プロジェクトが破たんした事例である。

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(1) 計46案からザハ案が選ばれた

2012年(平成24年)7月:JSC(日本スポーツ振興センター)と有識者会議(座長:佐藤禎一氏)が「新国立競技場基本構想国際デザインコンクール」の実施を決定した。

 

条件は、
・2019年9月のラグビーW杯の会場使用に間に合うこと
・8万人規模
・開閉式の屋根
・延床面積約290,000平方メータ
・総工事費は、約1,300億円程度
・完成は2018年

(2) 審査

審査委員長の安藤忠雄氏のもと、技術調査・予備審査・一次審査で11件に絞られ、2012年年11月の最終審査では
・未来を示すデザイン
・スポーツ
・イベントの際の実現性
・技術的チャレンジ
・実現性

の4項目で評価され、2012年(平成24年)11月、有識者会議の承認のもとで審査結果が発表され、イギリスのザハ・ハディドの作品が最優秀賞となった。

 

(3) 想定外の納期とコスト

その後、総工事費が3000億円で当初の1300億円の2倍越えと判明し、ラグビーW杯にも間に合わないと判明した。
2015年5月、下村文科相は、工期・費用の問題から計画の簡素化を発表。
・開閉式屋根の設置は五輪後に
・可動式観客席(15,000席)を仮設に変更し五輪後には取り外す

~などとした。

 

JSCは計画を見直して修正案を6月にまとめたが、当初案とは大きく外観が異なり1,700億円となった。

7月7日、有識者会議で予定通りの10月着工への施設内容やスケジュールなどが承認された。

 

■他会場との比較
ロンドン五輪のスタジアム 約800億円
北京五輪のスタジアム 約500億
シドニー五輪のスタジアム 約700億円
新国立競技場 約1700億円

 

(4) 白紙撤回の発表

従来案にこだわり続けた森喜朗・東京五輪組織委員会会長を説き伏せて、7月17日、安倍晋三首相が記者団に、
・計画の白紙化
・ラグビーW杯(2019年9月)の新国立での開催断念

を表明した。

 

(5) 新デザインの選定方法

建築家と建築会社が組んで応募するなど、デザイン・設計・施工が一括の「デザインビルド」方式の公募型の入札となった。

 

当初から QDC一体管理 という初歩的な知識があれば、
・設計・工事会社
・ザハ氏

への発注取り消しの補償金100億円のムダな支払いもなかった。

 

(6) 検証委員会の報告書

新国立競技場の整備計画が白紙撤回となった問題について、9月24日、第三者からなる検証委員会が報告書を取りまとめ、発表した。

 

報告では、文部科学省及びその管轄の日本スポーツ振興センター(JSC)に、
・建設プロジェクトを統括する能力がなく、
・責任の所在
・上限の予算が曖昧なままだった

~ことを指摘。下村博文文科相や文部科学事務次官、JSCトップにその責任があるとした。

 

しかし、もっと重要なことがある。
デザインを、「納期・コストと切り離して決めてしまった」ことである。このQDC一体違反が最も重要な問題である。仮に統括能力があり責任の所在が明らかであっても、QDC一体の原則を無視したのでは問題を防げなかったからである。

(以上)